更新日 2008年05月01日
一本松正道
1. | 世界最高出力密度(当時)のSOFCセルの作成 |
2. | Electrochemical Vapor Deposion プロセスの成膜メカニズムの解明 |
3. | 酸化鞘・シ導体ガスセンサーの動作機構の解明(1) (表面反応:吸着と電気伝導変化の関係) |
4. | Electrochemical Vapor Deposion を用いた超高性能SFOC空気極の製作と反応機構の解明 |
5. | 酸化鞘・シ導体ガスセンサーの動作機構の解明(2) (焼結体内の電気伝導度変化支配要因の決定) |
6. | 酸化鞘・面のH2/O2反応に於ける Magnetic Field Effect の発見 |
7. | 火炎中でも使用できる超高性能CDV用トレーサー粒子の開発 |
8. | スチームリフォーシング反応に於けるS被毒とC折出の関係の発見 |
9. | スチームリフォーシング用超高次脱硫剤の開発 |
10. | 超高効率ミラーサイクル希薄燃焼ガスエンジンの開発 |
候補者は、固体酸化物燃料電池(SOFC)、半導体ガスセンサーの研究、水蒸気改質触媒の研究、高効率ガスエンジンの開発、流体のレーザー計測の5分野で国際的に高く評価される研究業績を上げている。
SOFCの分野では、世界で初めて1W/cm2に迫る高出力密度での発電に成功した。また、SOFCの最も代表的セル製造法であるEVD(Electrochemical Vapor Deposition)法の成膜メカニズム(成膜速度が安定化ジルコニア膜中の少数キャリアである電子の移動に支配される)を定量的に明らかにした。更に、EVD法を用いて製造した超高性能空気極は10年余を経た現在でも世界で最も高性能な空気極とされている。世界で初めてSOFC内部の温度分布の重要性に着目し、シミュレーションを行ったこともSOFC開発に大きく貢献した。
酸化錫半導体ガスセンサーの研究では、センサーの電気伝導度の過渡応答特性を詳細に調べることにより、表面に負電荷吸着した酸素イオンが可燃性ガスと反応して脱離する過程と再吸着する過程の動的バランスにより決定されることを明らかにした。また精密なホール効果測定を行うことにより、焼結体であるセンサー全体の電気伝導度の変化が従来説のように粒界のダブルショットキー接合により支配されてはおらず、焼結体が表面と粒内が区別されない超微粒子で構成されており、その個々の超微粒子の中のキャリア密度が変化することによりよって全体の電気伝導度が変化していることを初めて明らかにした。
また、センサー研究の過程で酸化錫上のH2/O2反応がMagnetic Field Effect を持つことを発見した。Magnetic Field Effect はこれまで低温でのH2のオルト/パラ変換反応や溶液中での反応では知られていたがこの発見は常温を超える温度での反応としては初めての発見であった。
水蒸気改質反応の研究では、共同研究者の岡田治とともに改質触媒を被毒した極微量のSが触媒上でのC析出を起こす触媒となることを初めて明らかにした。更にSをppbレベルまで脱硫し改質触媒のS被毒を完全に防ぐことによりC析出により従来不可能とされていた低S/Cの条件でも水蒸気改質プロセスの運転が可能であり、大幅な省エネルギーが可能となることを示した。この技術は現在リファイナリーでの水素製造プラントや燃料電池用改質装置などに広く用いられている。
高効率ガスエンジンの研究では国内外の代表的ガスエンジンメーカーである三菱重工業やイエンバッハ社と共同で500-1000kW級のガスエンジンのミラーサイクル化開発を行い、このクラスで初めて40%を超える発電効率を実現し、市場導入を行った。今日、日本市場における当該クラスで新たに設置されているエンジンのほとんどがミラーサイクルを採用している。
流体のレーザー計測の分野では、LDVの高精度化とそれを用いた流体素子内の流れの解析を行った。LDVの高精度化の分野では火炎中での使用可能な超高性能トレーサー粒子(5ミクロン程度の均一な粒径を持つ多孔質石英ガラス粒子)を開発した。このトレーサーは開発後15年を経た現在でも最も高性能なトレーサーとして重要な測定に用いられている。(高価過ぎるのが問題だが)また、高精度化したLDVを用いて代表的な流体素子であるフルディックス素子中の振動流の詳細なメカニズムを初めて明らかにし、ガスメーターとしての応用に道を開いた。
更に、2次元LIFの計測を用いて、ガスタービンや副室式希薄ガスエンジン内の流れの解析や非接触での温度分布の計測などを行い、これまでよく理解されていなかった内燃機関内部の燃焼反応の詳細について多くのデータを得て内燃機関の改良を行った。